無自覚な罪作り

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*無自覚な罪作り・3* 「少し休憩しよう」 演奏会のリハーサル。 一向に状況が改善されない、そんななんとも言えない重たい空気が限界まできた頃合いを見計らうように、懐中時計を見ながら成瀬さんが俺達に声を掛けた。 「次は、三十分後に開始しよう」 そう言って、成瀬さんは手にしていた懐中時計の蓋を、パチンと閉めた。 「………やっと休憩かよ」 ウンザリした声で呟きながら、ピアノの椅子から立ち上がった北川さんは、不機嫌そうな表情のまま、さっさとブースから出て行った。 不機嫌な原因は、俺だ。 いくら言っても、演奏練習をして来た様子が無く、相変わらず音を抜きまくるし、ペダルで誤魔化す。 そんな北川さんに、俺がダメ出しの嵐をするもんだから、機嫌の悪い事。 ダメ出しされたくなかったら、練習してくればいいだろうに、そんな努力、欠片も感じられない……。 本当に、前途多難だ……。 三十分の休憩か……どうするかな。 自分の身の振り方を考えて、どうするか悩む。 三十分なんて時間、きっと強烈な睡魔が襲ってくるに違いない。 だからと言って、ブースで寝るのは、演奏者の二人に失礼な気もするし、外の空気も吸いたい。
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