無自覚な罪作り

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そういえば、近くに公園があったな、と思い出す。 日向ぼっこがてら、公園のベンチにでも座ってのんびりするのもいいし、居眠りするのもいいかもしれない。 開始五分前に、携帯のタイマーをセットしておけば大丈夫だろう。 そう思い立った俺は、外の空気を吸うべく、ブースを後にした。 ………なんだろう? ……アラームの音か? ………それと………紙を捲る音? 音に誘われるようにして、沈んでいた意識が浮上していく。 そっと瞼を開けると、綺麗な指が、本のページを捲る様子が見えた。 爽やかな柔らかい風に、サラサラと髪の毛が頬を擽る。 その擽ったさに身を捩ると、間近から、耳に心地良い声が降ってきた。 「目が覚めたか?」 ………え? 状況が理解出来ず、一気に眠気が吹き飛ぶ。 声がした方を、恐る恐るといった感じで見やると、綺麗な成瀬さんの顔が、すぐ近くで俺を見下ろしていた。 ………え!? 数秒ほど固まった後、俺が成瀬さんの肩に凭れて寝ている体勢だという事を理解した。 「す、すみません!」 慌てて離れる俺の肩に、成瀬さんの着ていたジャケットが掛けられているのに気付く。
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