無自覚な罪作り

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「………リハーサルが終わったら、食事に 行こう」 誤魔化しは効かなかったみたいだ…。 「いえ、大丈夫です」 「何が大丈夫なんだ。少しやつれている上に、顔色も良くない。そんな状態のどこが大丈夫なんだ?」 少し怒っているような声色の成瀬さんは、厳しい表情で俺を真っ直ぐに見た。 「自炊は出来ます。ちゃんと食べますから」 成瀬さんと食事だなんて、とんでもない。 珈琲だけで、あんな高級ホテルに連れられて行ったのに、食事になんて、それこそどんな高級店に連れて行かれるか、分かったもんじゃない。 テーブルいっぱいに高級料理を並べられて、『さあ、食べろ』なんて言われそうだ。 その上に、『君は、少し太った方がいい』とか天然発言をしながら、山のようにデザートを頼む成瀬さんの姿が、鮮明に浮かんでくる。 そして、俺は残す事が出来ない体質……。 地獄を見るのは明らかだ……。 「それが信用できるとでも?」 「……信用してもらうしか…」 それ以外に、他に言いようがない。 そんな俺を見ていた成瀬さんの表情が、心配するような、それでいて少し辛そうなものに変わった。
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