冷徹貴公子は嫌な奴

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奴の、周りに与える印象が、前より優しく…柔らかくなった。 それは、すごく良い事だと思う。 「…………」 けど、あんな姿を見るのは、正直嬉しくない。 肩とか、腕とか、気安く触られてんじゃねーよ! 鼻の下、伸ばしやがって、あのくそピアニスト! 「大丈夫、大丈夫。あれ、君の為だから、気にしなくていいよ」 嫉妬でモヤモヤしている俺に、三國さんが、軽い調子で急にそんな事を言ってきた。 「俺の……為?」 あれが? あの、スケベ心丸出しの、あれが? どうやら、そんな心情が顔に出ていたらしい。 俺の顔を見て苦笑した三國さんは、声を少し潜めるようにして説明してくれた。 「あれは、君を守る為のカムフラージュだから。最近、やたらと女性客が増えてるのは、気付いてるよね?」 問われて、直ぐに頷いた。 確かに、ここ最近、月山薫目当ての女性客が増えてきている。 「そんな客の前で、君だけにベッタリして、つれない態度ばかりしてたら、いくら男相手とはいっても、彼女達は面白くないだろう?変な噂を流したり、君に直接、手を出してくる人間が出ないとも限らない。だから、敢えて薫は、ああやって予防線を張ってるんだよ」
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