無自覚な罪作り

15/57
前へ
/550ページ
次へ
「…成瀬さんは、好意でくれたんだと思う」 ただ、天然なだけで。 「普通、顔色悪いなら飯だろ」 「まあ、食事にも誘われたんだけどさ」 「は?」 突然の不機嫌そうな声に、逆に、「え?」と返すと、月山薫の眉間にシワが寄った。 なんで? なんで、いきなり不機嫌? 俺、怒らせるような事、言ったか? 「なんで、あいつがお前を食事になんて誘うんだよ」 「ちゃんと食べるって言ったのを、信じてもらえなかったから?」 そんな俺の答えを聞いて、月山薫は眉を顰めた。 「………絶対、行くなよ」 釘を刺すような月山薫の言葉に、思った疑問をそのまま口にする。 「なんで?」 「なんでだぁ?お前、行きたいってのかよ。あいつと?二人で?」 益々、機嫌の悪くなる月山薫に、訳が分からなくて戸惑う。 「別に、行きたいって訳じゃないけど、なんでそんなに『行くな』って言うわけ?」 「…………お前、それマジで言ってんのか?」 どういう訳か、俺の戸惑いが伝染したように、月山薫も、顔に戸惑いを浮かべながら俺をジロジロと見てくる。 「本気…だけど?」 恐る恐る答えると、項垂れるようにして、月山薫が盛大に息を吐いた。
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加