無自覚な罪作り

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「おい?」 心配になって声を掛けると、グワッと月山薫が顔を上げた。 「この、馬鹿ザルが!奴に下心があるって言ってんだよ!それくらい気付け、この間抜けザル!」 「………はい?」 怒鳴られて、いつもだったら萎縮するか、逆ギレするかのどちらかだけど、今回は違った。 下心? 成瀬さんが? 「いや、ないない。あの人に限って、それは無いって」 あんな裏表の無い人に、下心なんてある訳ない。 企むとか、そんな人を騙すような事が出来る性格じゃない。 見当違いな月山薫の考えが可笑しくて、思わず笑ってしまう。 すると、そんな俺の顔が癪に触ったのか、頬を思い切り抓られた。 「いってぇ!!いひゃい!」 「ヘラヘラヘラヘラ笑ってんじゃねえよ、この阿呆が。ムカつくんだよ、にやけザルが。あ?」 抓られながら、どす黒いオーラだだ漏れで睨み下ろされた。 そのあまりの恐ろしさと、頬の痛みとで涙目になる。 「気ぃ付けろっつってんだろうがよ。あ?人様の言葉が理解出来ねえのか、このサル。てめえの耳は飾りか?それとも腐ってんのか?あ?人間様の言葉、有難く聞き入れろよ、馬鹿ザル」
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