3859人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうやって、人を見下して、気分いいんだろうな?」
そうじゃない。
確かに、成瀬さんの言い方は誤解されやすいけど、俺も成瀬さんも、そんな事が言いたいんじゃない。
取り敢えず、だ…。
「その口の中のガム、捨ててもらってもいいですか?」
北川さんの鋭い睨みを、怯む事なく真っ直ぐに見返すと、気持ちに気合いを入れるようにグッと背筋を伸ばした。
「大切な話をしている時に、ガムを噛みながら人の話を聞くのは、とても失礼ですよね?しかも、今はリハーサル。仕事中です。理解してもらえたのなら、捨ててもらってもいいですか?」
「………」
俺を見返していた北川さんの、口の動きが止まった。
「確かに、お二人に比べると、俺はガキだと思います。年齢もそうですけど、キャリアもです。お二人に、俺みたいなガキが口出しするべきじゃないとも思います。だけど」
グッと、自然に握った拳に力が入る。
確かに、俺なんかじゃ力不足かもしれない。
ていうか、監修なんてやった事もないんだから、確実に力不足だ。
だけど…。
「俺は、思った事は伝えますし、感じた事は声に出して言います。でも、それは、お二人を非難したいからじゃなくて、演奏会を成功させたいからです」
最初のコメントを投稿しよう!