無自覚な罪作り

21/57
前へ
/550ページ
次へ
「そうやって、人を見下して、気分いいんだろうな?」 そうじゃない。 確かに、成瀬さんの言い方は誤解されやすいけど、俺も成瀬さんも、そんな事が言いたいんじゃない。 取り敢えず、だ…。 「その口の中のガム、捨ててもらってもいいですか?」 北川さんの鋭い睨みを、怯む事なく真っ直ぐに見返すと、気持ちに気合いを入れるようにグッと背筋を伸ばした。 「大切な話をしている時に、ガムを噛みながら人の話を聞くのは、とても失礼ですよね?しかも、今はリハーサル。仕事中です。理解してもらえたのなら、捨ててもらってもいいですか?」 「………」 俺を見返していた北川さんの、口の動きが止まった。 「確かに、お二人に比べると、俺はガキだと思います。年齢もそうですけど、キャリアもです。お二人に、俺みたいなガキが口出しするべきじゃないとも思います。だけど」 グッと、自然に握った拳に力が入る。 確かに、俺なんかじゃ力不足かもしれない。 ていうか、監修なんてやった事もないんだから、確実に力不足だ。 だけど…。 「俺は、思った事は伝えますし、感じた事は声に出して言います。でも、それは、お二人を非難したいからじゃなくて、演奏会を成功させたいからです」
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加