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言われて、女性客と話をする月山薫を見る。
「ほんの少しだけ相手をしておけば、彼女達は満足してくれるだろうしね。その後、君にベッタリしていても、仕事相手なんだからと納得してくれるだろうしさ。女の嫉妬ほど、怖いものはないからね」
俺の為だったんだ…。
以前の月山薫だったら、誰とも話す事なく、真っ直ぐにカウンター席に来て、お酒を飲んでいた。
あいつは愛想を振りまくなんて事、百パーセントやらない人間だ。
はっきり言って、人付き合いも上手い方じゃない。
好き嫌いがハッキリしてるし、上から目線な奴だし、媚びるとか、社交辞令とか一切通じないし、やらないし。
そんな奴が、俺の為に、ああやって振りまきたくもない愛想を振りまいて、笑いたくもない社交辞令の笑顔を浮かべてる。
それなのに……。
変にヤキモチ焼いてた自分が、本当にガキで嫌になる。
本当に、情けない…。
自己嫌悪にシュンとなる俺の前に、トンっとグラスが置かれる。
顔を上げると、三國さんが笑顔でこちらを見ていた。
…………油断ならない笑顔だ。
「まあまあ、折角、大人の仲間入りをした事だし、今日はパーっと飲んじゃおうよー」
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