無自覚な罪作り

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そこは間違えて欲しくない。 勘違いもして欲しくない。 「俺達は、競争相手じゃありません。同じ音楽を目指す仲間です。それは、間違えないで下さい」 いがみ合いたいんじゃない。 最高の演奏を、皆で実現させたいだけだ。 「もう一度、最初から、お願いします」 「…………」 黙って俺の言葉を聞いていた北川さんは、ペッと、あろう事か床にガムを吐き捨てた。 なっ……!! その行動に、瞬間湯沸かし器のように頭に血が上ったけど、それは直ぐに治った。 何故なら。 北川さんが、ブースを出て行く事なく、ピアノの椅子に座ったからだ。 そんな北川さんの様子を、俺は勿論、成瀬さんも驚いたように見守っていると、少しバツの悪そうな顔をした北川さんが、ぶっきら棒な声で成瀬さんを促した。 「……最初から、やるんだろ。さっさとしろよ」 「あ、あぁ…」 戸惑いながらも成瀬さんが椅子に座ると、最初の曲から演奏が始まる。 ………相変わらず、演奏、雑だけど。 衝突するのは、悪い事だとは思わない。 けど、それは、前に進む為の時に限っての事だ。 これで、少し前進出来るかな?
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