無自覚な罪作り

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*無自覚な罪作り・6* 前進、するかと思ってた……。 そんな俺の考えは、どうやら甘かったようで……。 少しは演奏練習に力を入れてくれるかな、なんて期待をしていたけど、北川さんの演奏は相変わらずで、努力したようにも見えなかった……。 いや……。 少しだけ前進した事がある。 リハーサル中に、ガムを噛まなくなった。 以前と変わった事といえば、それだけだ。 そして、俺の出すダメ出しに対しては、以前のように逆ギレしたり、文句を言ってくるなんて事はなくなったけど、今度は、「あー、はいはい」と、面倒くさそうに流されるようになった。 これってどうなんだ? 前進っていうよりも、後退してるように思うのは、俺だけか……? そうして今日も、演奏内容的には実りがないまま終了し、北川さんは、サッサとブースを出て帰ってしまっていた。 ブースには、片付けをしている俺と、楽譜をチェックしている成瀬さんの二人だ。 黙々と楽譜をチェックする成瀬さんは、時折、目頭を押さえている。 その表情には、疲れが見て取れた。 「成瀬さん、あまり寝てないんじゃないですか?顔色、少し悪いですよ?」
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