無自覚な罪作り

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「ん?まあ、色々とやる事が山積みだからな。少し寝不足ぎみかな」 楽譜から目を離した成瀬さんは、苦笑しながら俺を見た。 「この演奏会以外に、もう一つコンサートがあるんだ。譜読みやリハーサル、それに打ち合わせなども立て込んでいて、生活のリズムがまだ整っていない感じかな」 「コンサートって、凱旋コンサートの事ですよね?いつ頃あるんですか?」 以前、見たニュースを思い出した。 「この演奏会の、二週間後だ」 それだけ本番が重なっていれば、確かに準備に追われるのも無理はない。 しかも、演奏会に至っては、製作側の裏仕事まで全て成瀬さんが準備しているのだから、やらなければいけない仕事なんて、それこそ山のようにある筈だ。 「何か、手伝える事があったら、遠慮なく言って下さい。俺で出来る事なら、手伝いますから」 そう言った俺を、成瀬さんは少し考えるようにしてジッと見つめてきた。 「……そうだな。それじゃあ、君に頼みたい事があるんだが」 ………なんで、こんな事になったんだ? いや、手伝うって言ったよ? 間違いなく、俺が言いましたよ、この口で。
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