無自覚な罪作り

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だからって、なんでこの状況? 見下ろすと、そこには成瀬さんの綺麗な寝顔がある。 俺、仕事を手伝うって言ったつもりだったんだけどな…。 どういう訳か、膝枕なんてものを、生まれて初めてしている、この状況……。 『男の膝枕なんて、硬くて寝心地悪いんじゃないですか?』と、困惑しながら言った俺は、成瀬さんに、『何もないよりは、寝やすい』と笑顔で返されてしまい、こうして今に至るわけで……。 疲れているのだから、少しでも安眠してもらおうと、身体を動かさないよう頑張っている最中だ。 ていうか、緊張感ハンパない。 少しでも身動ぎしようものなら、起こしてしまうんじゃないかという心配から、身体は勿論の事、呼吸さえ細心の注意を払ってしまう。 そっと辺りを見回せば、夕暮れ時の公園には、子供達が無邪気にはしゃぎ回る姿が見えた。 『三十分後に起こしてもらえると、助かる』と、俺の膝に頭を乗せ、ベンチに横になった成瀬さんは、三分も経たないうちに寝てしまった。 次のリハーサル場所に移動するまで、五十分ほどの空きがあり、少し眠りたいとの成瀬さんの願いを叶える為、俺は動く事なく膝を貸している。
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