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声を発する間も無く、その除菌剤を大量噴出してきやがった。
『なにしやがる!』と文句を言った俺に、奴は、『除菌』とだけ返した。
俺は、菌か?
ばい菌か?
久し振りに会う恋人に、出会い頭、いきなり除菌剤撒くか?普通!
しれっと立ち去ろうとするヤツを捕まえ、罵り合いをしつつ、中に入った俺を待ち受けていたのは、発狂するくらい散らかりまくったピアノ室だった。
なんだ、この汚部屋は。
いや、もう部屋なんて次元じゃない。
汚物そのものだ。
気怠そうに聞き流す月山薫に説教を飛ばしつつ、汚部屋を片付けていき、相変わらずピアノのランプ台に乗っている、吸い殻が山を築いている灰皿を見た時は、あまりの腹立たしさに、灰皿ごとゴミ袋の中に捨ててやった。
これで、何個目の灰皿だ?
ゴミに葬り去ったのは。
月山薫が、何か怒鳴っていたけど、知るもんか。
捨てられるのが嫌なら、自分で片付けろ。
寧ろ、ここに置くな。
ピアノ室を、満足がいくまで片付け、掃除し終えた俺を待ち構えていたのは、いつもの我儘大王の、『珈琲』の一言だった。
そうして、いつもの珈琲タイムを過ごしていると、席を外した月山薫が、耳かきを手にして戻って来た。
『耳掃除やれ』の、有無言わさない命令に、『やった事ないから、どうなってもしらないぞ』と、脅しめいた本当の事を言うと、『いいから、やれ』という絶対的命令が下された。
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