無自覚な罪作り

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しかも、この野郎……また、俺の膝に除菌スプレーを吹き掛けてから、頭を乗せてきやがった。 なんだ、その扱い。 俺、そんなに汚いって? いやいや、あんたのピアノ室に比べたら、天と地ほどの差があるから。 耳にスプレーしてやろうか、このくそピアニスト。 なんて、最初は苛々していたものの、いざ耳掃除を始めると、その難しさに集中力を使い、いつの間にか苛々なんて何処かに消えてしまっていた。 そうして、今に至る。 「ほら、反対」 「ん」 素直に返事をした月山薫が、身体の向きを変えた。 つまり、俺の方を向いている事になる訳で……。 ……あれ? こ…れは、恥ずかしいかも…。 さっきまで意識していなかったのに、月山薫の向きが自分の方へと変わっただけで、なんだか気恥ずかしくなる。 「う、動くなよ?」 「分かってる。耳、潰すなよ」 軽口を叩く月山薫の耳に、そっと触れる。 耳まわりの髪を、優しく払い退けると、少し耳朶を引っ張り、中を見易くした。 そろそろと、耳かきを下ろしていき、痛くならないよう細心の注意を払いながら動かしていく。 ちょっと慣れたかも…。
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