無自覚な罪作り

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いや、今のは、成瀬さんの言い方が悪い…。 『どうして』、移動するのか、『何故』、ここじゃ駄目なのか、そういった肝心な説明をすっ飛ばして、結論のみを言い渡されても、北川さんの性格上、納得出来る訳がない。 その上、あの無表情な成瀬さんの態度。 絶対、反感を買うだけだ。 一言でも、『すまない』とか、『悪い』みたいな詫びなり、謝罪の言葉があれば、かなり違うのに…。 「事前に、何の相談もナシか?天才ピアニスト様にしてみりゃ、俺の都合なんてどうでもいいんだろうな」 やっぱり、反感買った……。 内心、頭を抱えていると、キョトンとした表情の成瀬さんが、不思議そうに北川さんを見た。 あの表情……何で北川さんが怒ってるのか、絶対分かってないな……。 「何か、不都合でもあるのか?」 そして、その言い方は更にマズいと思う…。 ハッ!と短く笑った北川さんは、やってられないとばかりに荷物を纏め出した。 「成瀬さん。北川さんにも、スケジュールの都合とか、色々とあると思うんです。リハーサル場所とか、その他にも色々と手配や、準備をしてもらって、とても有難いんですけど、事後報告じゃなくて、事前に確認や連絡してもらった方が、スケジュールのトラブル回避とか、調整もしやすいと思います」
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