3859人が本棚に入れています
本棚に追加
「さあ…?意味があるんじゃないの?成瀬さん的には」
これが限界。
何も言えないんじゃ、こう言うしかない。
『………ちゃんと聞いとけよ、そういう事は』
苛々している月山薫の口調に、正直、心苦しい。
言ってしまいたいけど、自分の事じゃないし、凄く繊細で複雑な事柄に、いくら恋人とはいえ、軽々しく言える訳がない。
『言わない』という、成瀬さんとの約束もある。
「ごめん…」
色んな意味で、謝罪の言葉を口にすれば、電話越しに溜息が聞こえてきた。
『……帰ったら…いや、帰る時は連絡しろ。何かあっても、連絡しろ。いいな』
子供の、お使いか!
なんてツッコミたかったけど、月山薫の機嫌の悪い声と、有無言わせない絶対的な命令に、何も言い返せなかった。
「……うん、わかった」
この時……。
月山薫の言葉を…。
気持ちを……。
もっと真剣に受け止めていればよかった……。
最初のコメントを投稿しよう!