冷徹貴公子は嫌な奴

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………。 「……美味しい」 苦いのかと思っていたそれは、とても甘くて、まるでジュースのような味だった。 「それね、ピーチフィズっていう、リキュールベースのカクテルだよ。美味しいでしょ?」 「はい。びっくりしました」 いや、本当に。 お酒が、こんなに美味しいとは思わなかった。 「これなら、飲めそうです」 「良かったー。ほら、どんどん飲んじゃって」 「で?何を飲ませてんだ、てめえは」 いきなり聞こえてきたデスボイスに、三國さんが固まった。 振り向くと、直ぐ後ろに月山薫が、人でも殺しそうな恐ろしい表情で立って、三國さんを睨み下ろしている。 「え……いや?ジュース……?みたいな?」 冷や汗をダラダラと流しながら惚けようとする三國さんを、月山薫の殺人眼力が追い詰める。 「おい、サル。なに飲みやがった」 「え?ピーチフィズ?っていうカクテル。美味しいからって、勧めてもらって」 ありのままを話す俺を、三國さんが泣きそうな顔で見てくる。 え? 何? なんか、まずかった? 「………三國、てめえ、どうやらしにてぇらしいな?あ?いっそ、ここで息の根止めてやろうか?」
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