無自覚な罪作り

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時々、歩きながら振り返るけど、バスが通る気配はない。 腕時計を見れば、もう少しで、リハーサル開始時間だ。 どう考えても、間に合う筈がない。 遅刻だ。 完全に遅刻だ。 知らない土地だし、余裕を見て、駅には一時間前に到着していたのに……。 バス停の時刻表を見たら、出た直ぐ後だった。 そして、次のバスは一時間後…。 少しでも距離と時間を稼ごうと、こうして歩いてはみたものの……。 どう考えたって、時間的に無理な話だ。 まさか、こんなに歩く羽目になるとは思ってなかった……。 額に浮かんだ汗を手の甲で拭うと、携帯電話を取り出す。 遅刻するって、連絡しておこう。 問題は、いつ着くのか、時間が予想出来ないところだ。 先に始めててもらおう。 けど……あの二人だけでリハーサルをさせるなんて……すっごく心配だ。 いや、演奏がどうとか、そういった事じゃなくて……コミュニケーション的な問題ばかりが頭に浮かんでくる。 それでも、現実、その場に間に合わないんじゃ、どうしようもない。 なんとか、二人だけで頑張ってもらおう。 なんて、俺の心配は必要なかった。
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