無自覚な罪作り

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遅刻者は、俺だけじゃなかった。 北川さんも、遅刻したからだ。 後を追い掛けるようにして来たバスに乗ると、憮然とした顔の北川さんが乗っていた。 そして、一時間半もの遅刻をした俺達を迎えたのは、呆れ顔の成瀬さんだった。 「二人して、こんなにも遅刻するとは……君達は、リハーサルに対する気構えが足りないんじゃないのか?」 そんな風に説教する成瀬さんに、北川さんは、ブチギレ……。 いや、ブチギレして当然だ。 こんな移動手段がない場所にあるなら、予め教えて欲しかった。 いや、事前に調べなかった俺達も悪いんだけど。 成瀬さんの天然さを、甘く見ていた…。 言い争う二人の間に入り、宥め、説得し、なんとかリハーサルを開始出来たのは、予定時刻よりも、二時間半も過ぎてからだった……。 しかも、リハーサル内容は最悪…。 互いの気持ちがギスギスしていて、とても一緒に演奏なんて雰囲気じゃない。 纏まらない……。 いや、どうやって纏めろっていうんだよ、これ……。 指示を出しつつ、途方に暮れていると、リハーサル終了予定時間よりも、五十分も早くに北川さんが、『帰る』と言い出した。
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