無自覚な罪作り

47/57
前へ
/550ページ
次へ
ちゃぽん、なんて間の抜けた音が聞こえてくる。 そんな様子を、呆然とした顔で見つめている成瀬さんの手を振り払った北川さんは、意地の悪い表情でせせら笑った。 「こうすりゃ解決だろ。あと何分なんて、くだらない事なんか気にしなくて済む」 言い捨てて、この場を後にした北川さんの後ろ姿が、どんどん遠ざかって行くのを流し見しつつ、川の方を見たまま動かない成瀬さんに声を掛けた。 「成瀬さん?どうしますか?」 「……今日は、もう終わりにしよう。北川がいないなら、仕方ないだろう。君も、早く帰るといい」 川の方を見たまま、俺を見る事なく言う成瀬さんに、もしかして…と、思った。 心なしか、声も元気がないように聞こえた。 「……もしかして、大切な物なんですか?」 そんな問い掛けに、成瀬さんの肩が、ぴくりと動いた。 やっぱり……。 「……いや、随分と古い物だし、濡れてしまっては、もう動かないだろう」 諦めたように…まるで自分に言い聞かせるような成瀬さんに、気が付けば身体が動いていた。 取り敢えず、橋を渡り終えると、川沿いの土手を下りて行く。 よくよく見れば、とても綺麗な水だし、水位も極めて浅そうだ。
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加