無自覚な罪作り

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川のほとりに立ち、腕を捲り、ズボンの裾を捲り上げていると、橋の上から、成瀬さんが声を掛けてきた。 「一体、何をするつもりなんだ?」 「何って、懐中時計を探すんですよ」 答えて、川の中へと足を踏み入れる。 思った通り、水は足首よりもやや上くらいで、とても浅かった。 これなら大丈夫だろう。 「成瀬さん、そこから、どの辺りに落ちたか誘導してもらえますか?」 「いや、君が、そこまでする必要は…」 「二人で探した方が、早く見付かりますよ。それに、大切な物なら諦めないで下さい。簡単に手放すなんて、勿体無いじゃないですか」 思い入れがある物を、そう簡単に諦めて欲しくない。 例え、壊れてしまったとしても、形ある物として、手元にあった方がいいに決まっている。 修理すれば、直るかもしれないんだし。 それに、あんな形で大切な物を失うなんて、そんなの悲しすぎる。 「…………」 驚いた表情を浮かべる成瀬さんは、暫く無言で、橋の上から俺を見つめた後、考えが頭の中で纏まったのか、不意に動き出した。 「……分かった。もっと右に。もっとだ」 成瀬さんの声を頼りに、川の中央へと足を進めた。
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