無自覚な罪作り

49/57
前へ
/550ページ
次へ
*無自覚な罪作り・11* 日が暮れて、あっという間に夜空になった。 辺りから、カエルの大合唱が聞こえ、ちらほらと、光りながら飛んでいる蛍達がとても綺麗だ。 探している懐中時計は、なかなか見付からず、川のせせらぎの音とは別に、俺達が水中を探っている音が響く。 夜になれば、もっと真っ暗になるのかと思ったけど、満月の所為か、とても明るい。 「……すまない。こんな事に付き合わせて」 不意に、成瀬さんの気を落とした声が聞こえてきた。 顔を上げて見ると、月明かりが反射する水面を、諦めの表情で見つめる成瀬さんの姿があった。 「謝らないで下さい。俺が勝手に手伝ってるんです。それに、二人で探した方が、早く見付かります」 この場の空気を下げまいと、努めて明るい声を出す。 「それに、こんな風に川の中に入ったのって、かなり久し振りです。川遊びみたいで、楽しくないですか?」 そう笑い掛ければ、成瀬さんは、少し驚いたような表情を見せてから、苦笑した。 「俺は、川遊びなんて初めてだ」 「え?子供の時、遊びませんでした?一度も?」 「一度もない。これが初めてだ」 まあ、確かに、成瀬さんが川遊びする姿なんて想像出来ないや。
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加