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*無自覚な罪作り・11*
日が暮れて、あっという間に夜空になった。
辺りから、カエルの大合唱が聞こえ、ちらほらと、光りながら飛んでいる蛍達がとても綺麗だ。
探している懐中時計は、なかなか見付からず、川のせせらぎの音とは別に、俺達が水中を探っている音が響く。
夜になれば、もっと真っ暗になるのかと思ったけど、満月の所為か、とても明るい。
「……すまない。こんな事に付き合わせて」
不意に、成瀬さんの気を落とした声が聞こえてきた。
顔を上げて見ると、月明かりが反射する水面を、諦めの表情で見つめる成瀬さんの姿があった。
「謝らないで下さい。俺が勝手に手伝ってるんです。それに、二人で探した方が、早く見付かります」
この場の空気を下げまいと、努めて明るい声を出す。
「それに、こんな風に川の中に入ったのって、かなり久し振りです。川遊びみたいで、楽しくないですか?」
そう笑い掛ければ、成瀬さんは、少し驚いたような表情を見せてから、苦笑した。
「俺は、川遊びなんて初めてだ」
「え?子供の時、遊びませんでした?一度も?」
「一度もない。これが初めてだ」
まあ、確かに、成瀬さんが川遊びする姿なんて想像出来ないや。
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