無自覚な罪作り

51/57
前へ
/550ページ
次へ
そんなの嫌だ。 絶対、泣き喚きながら探す。 見付かるまで、探す。 両手で頬を叩いて、気合いを入れ直した。 よし! 絶対、見つけるぞ! 「そんな大切な物なら、尚更、見付けないと。諦めるなんて、そんなの駄目です」 言いながら、場所を移動する。 「いや、もうこれ以上は……これだけ探して見付からないなら、諦めもつく」 「ここまできて、諦めるなんてカッコ悪いこと言わないで下さい。どうせなら、見付けて、バシッとカッコ良く決めましょう」 それらしき物に手を伸ばしては、また川の中に戻す。 この辺なのは、間違いないと思うんだけとなぁ。 「………どうして、君は…そんなにも人の為に動けるんだ?」 不意に静かな声で問われて、身体を起こす。 そこには、真剣な眼差しの成瀬さんが立っていて、ジッと俺を見つめていた。 「え?どうしてって………………さあ?」 「さあ?」 首を傾げると、そんな答えが返ってくるとは思っていなかったのか、成瀬さんは間の抜けた声で、同じ事をオウム返ししてきた。 「いや、だって、深く考えてないっていうか……普通、困ってる人がいたら、助けませんか?人の為に動いてる感覚とか、無いっていうか……それが当たり前…だと思うから?」
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加