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疑問形で返すとか、自分でも情けないけど、それしか答えられない。
だって、俺、人の為に動いてるかな?
どっちかって言うと、自己満足に果てしなく近いような気がするんだけど。
よく、お節介って言われるし、人の事情に首突っ込んでは、物凄く嫌がられるし。
「君は……」
そう呟いたきり、成瀬さんは押し黙ってしまった。
綺麗な目でジッと見つめられて、なんだかソワソワと落ち着かない。
これって、呆れられてる?
寧ろ、馬鹿にされてる?
そうは思うものの、成瀬さんから、そんな感じは少しも伝わってこない。
どうしようかと、足元に視線を落とした時だった。
…………あっ!!
月明かりに反射して、キラキラと光るソレが、水の中に沈んでいた。
慌てて拾い上げると、思った通り、成瀬さんの懐中時計だった。
「あった……ありましたよ!懐中時計!」
喜び勇んで、懐中時計を掲げて成瀬さんを見ると、驚いた顔で、ゆっくり近付いて来る。
「ほら!やっぱり、諦めなくて良かったじゃないですか!」
懐中時計を差し出し、成瀬さんの掌に乗せる。
すると成瀬さんは、宝物を手にするように恐々とそれを受け取り、両手で包み込みながら存在を確かめるように見つめた。
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