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どうして、拒めなかったんだろう…。
なんで……。
なんで、月山薫との約束を……大切な人との約束を忘れてたんだろう。
不意にドアが開き、外にいた月山薫が中に入って来た。
乱暴に締めるドアの音に、思わず身体が竦んでしまう。
シートベルトを締めた月山薫は、俺に話し掛けるどころか、視界にも入れようとしないで、無言のまま車を動かした。
対向車のランプや、流れる街明かりを眺めつつ、どうやら街中に戻って来たらしい事が分かった。
あれからずっと、お互い何も話さないまま、重苦しい沈黙が車内に流れている。
何か話したいけど、月山薫から漂ってくる拒絶のオーラに、結局、何も話せないまま、ここまで来てしまった。
それでも、このまま黙っていても、結局は何も解決しない。
もう、嫌われたんだろうか。
呆れられた?
愛想を尽かされた?
…………別れを切り出されたら…。
そんな思いが、グルグルと巡ってきて、声を出すのも怖くなる。
何か、一言でも口にすれば、全てが壊れて、崩れ去ってしまいそうな気がして、喉がヒクつく。
凄く怖い…。
怖くて、身体の震えが止まらない。
それでも……。
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