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「………ごめん」
震える、掠れたような情けない声。
それでも謝りたくて、もう一度、勇気を振り絞って口を開いた。
「……ごめん」
どんな顔をするのか見るのが怖くて、俯いたまま謝る。
「…………」
聞こえなかった筈はないのに、月山薫は、何も返してはくれない。
それは当然だ。
あんな場面を見れば、俺だったら正気でいられない。
きっと、もう何も返してはくれないだろうと諦め掛けた時、低い、怒りで小さく震える声が聞こえてきた。
「……何が仕事だ」
その声に顔を上げると、激しい怒りの目で前を睨み付ける月山薫の表情に、ドクンッと心臓が痛くなった。
「お前の仕事ってのは、ど田舎の川の中で他の男とキスする事か!?何が仕事だ!笑わせんな!!」
「…ちがっ…まさか、キスされるなんて思わなくて…」
「ったりめえだ!!その気があるなら、お前もあいつも殺してる!!」
大きな怒鳴り声に、身体が勝手に竦み上がる。
激しい月山薫の激情をぶつけられて、身体だけじゃなく、心までが小さく震える。
「気ぃ付けろって言っただろ!人の話ぐらい、真剣に聞けねえのか、お前!!」
覚えてる。
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