絡まる感情

4/37
前へ
/550ページ
次へ
「………ごめん」 震える、掠れたような情けない声。 それでも謝りたくて、もう一度、勇気を振り絞って口を開いた。 「……ごめん」 どんな顔をするのか見るのが怖くて、俯いたまま謝る。 「…………」 聞こえなかった筈はないのに、月山薫は、何も返してはくれない。 それは当然だ。 あんな場面を見れば、俺だったら正気でいられない。 きっと、もう何も返してはくれないだろうと諦め掛けた時、低い、怒りで小さく震える声が聞こえてきた。 「……何が仕事だ」 その声に顔を上げると、激しい怒りの目で前を睨み付ける月山薫の表情に、ドクンッと心臓が痛くなった。 「お前の仕事ってのは、ど田舎の川の中で他の男とキスする事か!?何が仕事だ!笑わせんな!!」 「…ちがっ…まさか、キスされるなんて思わなくて…」 「ったりめえだ!!その気があるなら、お前もあいつも殺してる!!」 大きな怒鳴り声に、身体が勝手に竦み上がる。 激しい月山薫の激情をぶつけられて、身体だけじゃなく、心までが小さく震える。 「気ぃ付けろって言っただろ!人の話ぐらい、真剣に聞けねえのか、お前!!」 覚えてる。
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3860人が本棚に入れています
本棚に追加