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言いながらも涙が止まらなくて、堪えようとすればする程、逆に止まらなくなる。
嗚咽を止めようと努力するけど、喉が辛くて仕方がない。
なんで……。
なんで、こんな風に傷付け合ってるんだろう…。
そう思ったら、なんか全てが虚しく思えてきた。
俺が、月山薫を好きだと思う気持ちも、大切に思う気持ちも……。
どんなに思っていたとしても、それら全部を疑われるんじゃ、ただ虚しいだけだ。
悲しくなるだけだ………。
「もういい……」
涙声で呟いて、横を向いて窓の外を見る。
月山薫も何も喋らないし、俺自身、そんな気力もない。
沈黙と、重苦しい空気が二人の間に流れた。
何も考えたくなくて、流れていく、涙で滲む窓の外の灯りを、ただぼうっと眺め続けた。
走り続けていた車は、暫くして俺の住むハイツの前で停車した。
「…………」
無言でこちらを見ようともしない月山薫を、ちらりと横目で見てからシートベルトを外す。
「……今日は、ごめん…それと、ありがとう」
どんなに険悪なムードでも、謝罪と礼はちゃんと言うべきだ。
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