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勿論、返事なんて返ってこない。
そのまま車を降りてドアを締めると、躊躇いもなく車が動き出し、そのまま走り去ってしまった。
そんな車を、見えなくなるまで見送る。
暫く立ち尽くしていたけど、ここにいても仕方ない。
重い足を動かして自分の家の前まで来た所で、ようやく思い出した。
荷物、全部を置いてきた……。
携帯も、財布も、鞄ごと忘れて来た……。
自分の情けなさに、深くて重たい溜息をつく。
幸い、家の鍵はズボンのポケットの中にあるから、野宿をしなくて済みそうなのは不幸中の幸いだ。
ポケットの中の鍵を取り出そうと、ふと下を見た。
…………これ。
ドアの前の下に、無数の煙草の吸殻が落ちていた。
多分……連絡が取れなくて、家の前で待っててくれたんだ…。
そう思った瞬間、止まっていた筈の涙が、頬を伝い落ちてアスファルトにシミを作った。
俺……酷いこと言った…。
今更ながらに、後悔が押し寄せてくる。
こんなに沢山……ずっと待っててくれたんだ……。
………それでも。
さっき言われた言葉が、頭の中に浮かんでくる。
想いを信じてもらえていないという事実が、ひどく心を抉る。
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