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「なあ、何があったんだよ」
後は帰るだけ、という時に、佳介がまた聞いてきた。
今日はずっと、こんな風に聞いてくる。
「……なんでもない。大丈夫だから」
そう答えて、無理やり笑うのも段々と疲れてきていて、正直、早く帰って一人になりたかった。
「なんでもないって……そんな顔して?全然、大丈夫じゃなかっただろ、今日」
数々の失敗を目撃されていて、何も言い返せない。
「なあ?俺には話せない事か?」
心配そうに顔を覗き込んでくる佳介に、申し訳なく思っても、男同士の恋愛話なんて、何をどう話せばいいのか分からない。
「失恋でもしたのか?」
………失恋。
その言葉が、ズッシリと心に重たく落ちてきた。
失恋……したのかな?
俺達、別れた事になんのかな?
そう思うと、枯れたはずの涙が滲んでくる。
「え?マジ…?」
俺の涙を見た佳介が、驚いたように目を見開いた。
「……わかんねー」
答えながら、手の甲でゴシゴシと涙を拭き取る。
恋愛経験がなさ過ぎて、今の状況が分からない。
俺、振られたのか?
それとも、ただの喧嘩?
昨日の月山薫を思い出すと、ただの喧嘩には思えない。
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