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「ていうかさ、彼女いたんだ?」
「……彼女じゃない」
まさか、『彼氏』とは言えず、そこは言葉の表現を濁しておく。
「じゃあ、告ったとか?」
「……してない」
告白なら、とっくの昔にし終わってる。
「よく分かんないけどさ、それなら本人に直接聞けば?奏の勘違いかもしんないじゃん」
「…………聞けない」
今は、月山薫と面と向き合って話せる自信がない。
昨日みたいに、また拒絶されたら?
無視されたら?
……今より、もっと状況が悪化したら…。
そう思うと、怖くて会いに行けない。
あいつが、どんな顔で…どんな目で俺を見るのか……。
もし、冷たい目で見られたら……。
見てもくれなかったら…。
そう考えただけで、心が挫ける。
酷く落ち込む俺の肩を、遠慮がちに軽く叩いた佳介は、取り繕うように明るい声を出して俺を励ましてくれた。
「まあ、そんなクヨクヨすんなって。新しい出会いがあるかもしれないじゃん?実は、そっちの方が運命の相手だったりするかもよ?」
運命の相手……。
月山薫より、他に好きになれる相手なんて想像出来ない。
月山薫以上に、好きになれる訳がない。
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