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*絡まる感情・3*
佳介と別れた後、二人して近くの喫茶店に入った。
「これ、忘れて帰っただろう」
そう言って、成瀬さんが渡してくれた紙袋の中に入っていたのは、昨日の俺の荷物一式だった。
「……わざわざ、すみません」
わざわざ、大学まで届けに来てくれたんだ。
それなのに、自意識過剰に警戒していた自分が、本当恥ずかしい…。
「携帯も入っているようだったし、早く届けた方がいいかと思ってね」
「ありがとうございます」
携帯……。
月山薫との約束を思い出す。
なんで、忘れてたんだろう…本当。
自己嫌悪に陥りながら、荷物の入った紙袋を隣の椅子に置いた。
「…………」
「…………」
なんとなく気まずい雰囲気に、場を持たせるように珈琲を飲む。
カップに口をつけながら盗み見ると、成瀬さんも同じように珈琲を飲んでいる。
そんな成瀬さんの顔に、不似合いな痣……。
綺麗な顔だけに、その痣が余計に痛ましく見えた。
「あの……痛み…ますよね…殴られたところ」
カップを下ろした成瀬さんは、自身の左頬に触れながら苦笑した。
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