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「痛くない、と言いたいところだが、それなりにな」
痛々しい痣を見ていられなくて、思わず俯く。
「すみません…」
それ以外、他になんて言ったらいいのか思い当たらない。
「君の所為じゃない。君が謝る必要はないだろう」
「それは……」
それはそうなんだけど、謝らずにはいられなかった。
「……君と月山は……恋人なのか?」
不意を突かれた質問に、思わず身体がピクリと動く。
一瞬、どう答えようかと考えを巡らせたけど、直ぐに迷いを消して顔を上げた。
「はい」
真っ直ぐに目を見て答える俺に、成瀬さんは少し悲しそうな…申し訳なさそうな表情を浮かべる。
そして不意に、俺の左瞼を指で優しく触れてきた。
「喧嘩でもしたのか?」
きっと、目の腫れ具合から、成瀬さんには俺が泣いた事はバレバレだ。
「…………はい」
「俺の不用意な行動の所為で……すまない」
謝る成瀬さんは、瞼の上を優しく撫でてから手を引いていく。
「月明かりに照らされた君が、あまりにも綺麗で……惹かれる気持ちを抑えられなかった」
「………っ」
なんで……なんでこの人、真顔でそんな恥ずかしい事をサラッと言うかな。
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