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気恥ずかしさに真面に見ていられなくなって、思わず視線を逸らす。
「君への気持ちに、俺自身、戸惑っている。その……今までは女性にしか興味がなかったんだ。言ってる意味は、分かるか?」
「分かります。俺も、そうでしたから」
最初は、やっぱり戸惑うし、気の迷いとか、勘違いじゃないかって、色々と悩んだ。
「ようやく、自分の気持ちを認める事が出来たところで、この失恋だろう?気持ちも頭も、まだ追い付いてないんだ」
…………ていうか。
「成瀬さん…その……好きなんですか?……俺の事」
はっきりと言われた訳じゃないし、未だに信じられない。
なんで、俺なんかをって思ってしまう。
俺の質問に、成瀬さんは少し呆れたように笑った。
「そうでなければ、キスなんてしない」
「あー……そう…ですよね」
決定的な言葉に、自然と頬が熱くなるのを感じた。
面と向かって、『そんな意思表示』を、される機会なんて、今までそんなになかった。
数える程しかない。
『好き』だと言われて、悪い気はしない。
好意的な気持ちを寄せられるのは、俺という人間を、認めてもらったような気がするからだ。
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