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「君を困らせるつもりはない。ただ、想うだけだ。言い寄るとか、口説くなんて事はしないから、安心してくれ」
「……成瀬さん」
そこまで言われてしまったら、俺としては、もう何も言えない。
本当に想うだけなら、それは個人の自由だと思う。
俺だって、月山薫を想うなって言われても、絶対無理だと思うし……。
頭で理解出来ても、心が納得出来ないのが『恋』だ。
惹かれる気持ちをコントロール出来るなら、誰も失恋で泣いたりしない。
「それと、演奏会の監修は、今まで通りに頼みたい。仕事は仕事として受けて欲しいんだ。俺個人の気持ちに、君が難色を示したとしても、それを理由に仕事を辞めないでくれ。俺自身、プライベートを仕事に持ち込む気は、一切ない」
仕事の話になると、成瀬さんの表情が、優しい微笑みから、笑いの無い真剣なものへと変わった。
きっと、この人なら仕事とプライベートを、きっちり分ける事が出来ると思う。
「仕事については、俺としても、しっかりやらせてもらおうと思ってます」
仕事を途中で放り投げるなんて、絶対に嫌だ。
もしかしたら、月山薫は激怒するかもしれない。
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