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*絡まる感情・5*
「え?仕事……入ってないんですか?」
久し振りにHiding placeに来ていた俺は、村沢さんの言葉に呆然となった。
「他の仕事が入ってるみたいで、先週から来てないよ」
今日こそは、と意気込んで、電話やメールよりも直接会って話そうとHiding placeに来てはみたものの、肝心の月山薫の姿がなかった。
「先週から……」
喧嘩してからだ。
ドクンと、心臓が嫌な音をたてる。
「……他に、何か言ってませんでしたか?」
俺の質問に、村沢さんは不思議そうに首を横に振った。
「いや、特に何も言ってなかったよ」
「そう…ですか…」
やっぱり……。
俺、避けられてるんだ。
覚悟はしていたけど、実際に目の当たりにすると、かなり傷付く。
会いたくないっていう意思表示を突き付けられたような気がして、思い切り凹んだ。
「何かあったの?月山と」
そんな俺の様子を、おかしいと感じたのか、村沢さんが心配そうに尋ねてくれる。
「いえ、何も。すみません、俺、帰りますね」
そんな村沢さんの優しさに、思わず泣きそうになってしまい、心の中で慌てながらも、努めて明るく振る舞って席を立った。
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