3860人が本棚に入れています
本棚に追加
自分の未熟さと情けなさに、自己嫌悪に陥る。
大切なリハーサルを、俺の不甲斐なさで潰してしまった事に、申し訳なさすぎて、何も言えないし、顔も上げられない。
本当、俺……何やってんだろ。
荷物を纏め終えたらしい成瀬さんが、ブースを出て行くのが気配で分かる。
最悪じゃん……俺、ほんっと馬鹿だ。
もう残っているのは俺一人になり、帰る前にブース内を片付けようとした時だった。
「………何かあったのか?」
出て行ったと思っていた成瀬さんが、まだブース内に残っていた。
驚きながら振り返ると、そんな俺を、成瀬さんは少し心配そうな表情で見ている。
「あ………いえ、何も」
駄目だ。
この人には、頼っちゃ駄目だ。
好意を持ってくれているからこそ……その想いに応えられないなら、頼ったりなんかするべきじゃない。
「そんな風には見えなかったが?何かあったんじゃないのか?」
そう言いながら、成瀬さんはゆっくりとした足取りで近付いて来る。
「いえ、本当に何も…」
「例えば…」
目の前まで来た成瀬さんが、俯く俺の前に立つ。
「月山と」
成瀬さんの口から、『月山』の名前が出て、思わず肩が揺れた。
最初のコメントを投稿しよう!