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「……やはりな」
俺の様子から、何かを悟ったらしい成瀬さんは、短く息を吐いた。
「まだ喧嘩が続いているのか?あれから、もう二週間だろう」
「…………」
なんて答えればいいのか分からなくて、俯いた顔を上げる事が出来ない。
「仕事に、プライベートな悩みを持ち込まれるのは困る」
「……すみません」
謝罪の言葉しか思い付かない。
具体的に、これからどうしていくとか、解決法を言葉にする事が出来ない自分が情けない。
「……そんな顔をされると……口を出さずにはいられなくなる」
聞こえた、成瀬さんの切なそうな声に顔を上げると、辛そうな表情を浮かべる成瀬さんの目が俺を捉える。
「…成瀬さん…」
「君にそんな顔をさせて、何故、月山が平気でいられるのか理解出来ない。俺だったら、とても耐えられない」
そう言って、成瀬さんは俺の左頬に右手を添える。
ハッとした俺は、その手から逃げるように二歩ほど後ろに下がった。
「……月山とは、あれから会ってません」
「会ってない?連絡は?電話か、せめてメールくらいはあるだろう」
「……」
ゆっくりと頭を振ると、成瀬さんは信じられないとばかりに、驚いた表情で俺を見た。
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