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矢継ぎ早に、言葉を畳み掛けてくる成瀬さんに、返せる言葉がなくてグッと押し黙る。
「そんなに辛い思いをさせられて、君は嫌にならないのか?俺なら、そんな思いはさせない」
嫌になる?
嫌になんて、なる筈がない。
だって……。
「……違います」
「違う?」
「違うんです……月山薫だから……あいつだから、こんなに苦しいんです。月山だから、悲しいし、辛いし、涙も出るんです……他の人なら、きっとこんな思いしない。あいつだから、こんなにも心が動くんです」
あいつじゃなかったら、きっとこんなにも苦しくない。
他の誰かじゃ、あんなに泣いたりしない。
月山薫っていう男だから、こんなにも心が動くんだ。
あいつだけだ。
それが、すっげー悔しいけど。
「だから、俺、あいつじゃないと駄目なんです。月山じゃないと」
静かに伝える俺に、成瀬さんは急に苦笑を浮かべた。
「……そこまで分かっているなら、何を躊躇う必要があるんだ」
「え……?」
「後は、君の勇気だけだと思うが?大切で無くせないものなら、行動するべきだ。尻込みするなんて、君らしくない」
そう言って、成瀬さんは意地の悪い笑みを見せる。
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