絡まる感情

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「初対面で、俺に食って掛かったのは、何処の誰だ?」 「そ…れは……」 俺です…。 当時を思い出して、恥ずかしさに俯くと、成瀬さんがクスクスと笑い出す。 「あんな風に喧嘩を売られたのは、初めてだった。なかなか新鮮だったよ。あっかんべーも、初めてだったな」 「その節は、色々と、すみませんでした…」 恥ずかしさに顔が熱くなる。 今思えば、怖いもの知らずにも程があるな、当時の俺。 「とにかく、早く連絡を取って、悩みを解消して仕事に身を入れてくれ。監修がそんな状態だと、非常に困る」 「……はい」 笑っていた成瀬さんの顔が真顔になり、「もし…」と言葉を続ける。 「もし、それでもまだ月山が君を泣かせるようなら、その時は君を攫っていくから、そのつもりで。月山は勿論、君にも嫌とは言わせない」 真っ直ぐ向けられる目が真剣で、成瀬さんが本気だと分かった。 「それが嫌なら、さっさと仲直りでもするんだな」 それだけ言うと、成瀬さんは今度こそブースを出て行ってしまった。 そんな成瀬さんの優しさが、とても温かく、それでいて切なく感じられた。
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