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「桜庭くん?」
外で待っていると、私服姿の村沢さんが店から出て来た。
慌てて姿勢を正すと、村沢さんに会釈をする。
「お疲れ様です」
「ありがとう。え?どうしたの?」
驚いた様子の村沢さんに、どう切り出そうかと考える。
「あの……相談…っていうか、聞いてもらいたい事があって……その……」
よくよく考えれば、こんな夜中に、しかも仕事終わりの人を捕まえるなんて、非常識だ。
村沢さんだって、疲れてるだろうし、早く帰って休みたいに決まってる。
「……いえ、何でもないです!すみません、俺、また来ます!」
思い直して、慌てて帰ろうとすると、村沢さんに引き止められた。
「桜庭くん、待って」
「すみません、こんな夜中に。日を改めます」
「大丈夫だから。俺の家、すぐそこなんだ。良かったら、そこで話を聞かせてもらえるかな?」
「適当に寛いでて」
そう言い残して、村沢さんはキッチンの方へと行ってしまった。
一人残され、手持ち無沙汰に部屋の中を見渡す。
綺麗に片付けられた部屋に、所々に飾られているガラス細工の置物が可愛らしい。
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