冷徹貴公子は嫌な奴

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踵を返す成瀬さんの腕を、咄嗟に掴んだ。 掴まれた当の本人は、まるでゴミでも見るような冷めた目で、俺を流し見る。 「あんた、こいつのピアノの何が分かるんだよ!」 月山薫のピアノを馬鹿にされて、瞬時に爆発した怒りが俺を突き動かす。 「こいつの音、聴きもしないで、『この程度』って、何だよ、それ!!こいつのピアノを馬鹿にするなんて、あんたの耳、おかしいんじゃねーの!」 怒りに任せて捲し立てると、相手の眉間のシワが更に深くなった。 「キャンキャンと煩い奴だな。月山、お前の犬か?随分と躾がなっていないようだが」 い、犬だぁーあー!? 「誰が犬だっ…!」 「俺の仕事相手だ」 俺の言葉を、真剣な表情の月山薫が遮る。 すると、成瀬の奴が可笑しそうに声を出して笑った。 「仕事相手?この犬がか?月山、お前も地に落ちたな。こんな子供が仕事相手とは、笑わせてくれる」 くっそー!! 犬とか、子供って言われても、否定出来ない。 月山薫は別にしても、世界的ピアニストにしてみれば、俺なんてゴミみたいな存在だろう。 それを否定出来るだけの実力が、自分にあるとは思ってない。
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