冷徹貴公子は嫌な奴

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思ってないけど…!! 「何とでも。お前みてえなボンクラに、こいつの凄さは分かんねえよ。一生な」 月山薫が静かな声でスパッと言い切ると、成瀬から笑い声が消えた。 月山薫……。 まさか、そんな風に庇ってもらえるとは思ってなくて、嬉しさと感動で思わずジーンときた。 「さっさと帰りやがれ。そんでもって、二度と、その面見せんな」 「……お前といい、その犬といい、弱い犬ほど、よく吠えるとは、よく言ったものだ。所詮、負け犬の戯言。帰らせてもらう」 嫌味な笑みを浮かべ、帰ろうとする成瀬の腕を、そうはさせるかと引っ張る。 まだ、言いたい事がある。 このまま帰らせてたまるか!! 「俺!あんたのピアノの音、大嫌いだからな!あんたの音に比べたら、月山薫の音の方が数万倍…」 言い終わる迄に、腕を払われた。 そして、冷たい眼差しが、初めて俺の目を真正面から捉える。 なんていうか、整った顔の分、睨まれると凄みが増して、思わず言葉が止まった。 「何を言われようと、痛くも痒くもない。所詮、何も分からない素人だろうからな。せいぜい、好き勝手に吠えているといい」 上から目線で言い終わった成瀬は、そのまま振り返る事なく、静かに店を出て行った。
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