冷徹貴公子は嫌な奴

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一応、恋人なんだから、気になるのは当然の事で……。 「着いたぞ、サル」 「え?」 言われて顔を上げると、俺の住んでいるハイツの前で車が停車していた。 うわ、全然気がつかなかった。 若干、気恥ずかしさを感じつつ、「ありがとう」と口にする俺の目の前に、いきなり小さな箱が差し出された。 「へ?」 間抜けな声を出す俺を、月山薫が呆れた表情で見る。 「バースデープレゼント。さっさと受け取れ、阿呆」 言われて、おずおずとそれを受け取る。 「あ、ありがとう」 まさか、用意してくれてるとは思わなかった。 だって、月山薫だ。 そういうイベント事とか、苦手だと思ってた。 あの演奏だけで、凄く嬉しかったから、まさかこんなサプライズがあるとは思ってなかった。 やばい!! 嬉しさで、顔がにやける!! 「あ、開けてもいい?」 「あぁ」 喜び勇んで聞く俺に、月山薫が苦笑する。 リボンを解き、包装紙を丁寧に外す。 黒い小さな木箱を開けると、中から高級そうな万年筆が出てきた。 「………」 「なんだよ、気にいらねぇのか?」 不満そうな顔をする月山薫に、慌てて首を横に振る。
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