冷徹貴公子は嫌な奴

22/47
前へ
/550ページ
次へ
そんな筈ない!! 嬉し過ぎて、声も出ない。 宝石を触るようにして、箱から万年筆を取り出し、嬉しさを噛み締めながらジッと眺める。 どうしよう…。 嬉し過ぎて、泣けてきたかも。 見る間に視界が滲み出し、スンッと鼻を鳴らす。 「俺、これで沢山、曲作りする!良い曲、沢山作るよ!すっげぇ嬉しい!大切にする。ずっと大切に使う…ありがとう!!」 目に溜まった涙を拭いながら、笑顔でそう月山薫に伝えると、真剣な顔をした月山薫が、不意に自身のシートベルトを外した。 「月山…?」 薫……と言おうとした。 したけど……。 覆い被さるようにして近付いて来た月山薫に、吐息ごと言葉を奪われた。 いくら夜中とはいえ、車の中とはいえ、まさかの路上でのキスに思わず身を竦める。 「……ちょっ……つきやっ…!」 いくら何でも、こんな人目につく所で! 理性が働いて、胸を押して抵抗してみるものの、俺の細腕なんかじゃピクリとも動かせなくて、月山の熱い吐息に全てを奪われる。 声も。 息も。 理性さえも…。 気が付けば、月山薫の腕に縋り付くのがやっとだった。
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加