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長いキスを経て、互いに息を整えるように大きく吐く。
それでも、月山薫の腕は俺を捕らえていて、どうしたらいいのかも分からずに、間近にある端正な顔を見つめた。
「……」
真剣な表情で見つめられ、目が逸らせなくなる。
何だろう……。
これって、どういう状況なんだろう。
………あ。
もしかして……二十歳の誕生日だから…。
そう思った瞬間、熱かった顔が、さらに熱くなる。
意識しすぎて、心臓が壊れそうなくらい激しく鼓動する。
でも、もしそうだとしたら……俺…。
「あの……薫…?」
緊張で、声が震える。
恥ずかしいのを我慢して名前で呼ぶと、月山薫は何を思ったのか、いきなり俺の鼻を指で摘んだ。
「ふぅえ?」
鼻を摘まれている所為で、何とも情けない声が出る。
「二十歳になったからって、あんま浮かれ過ぎんなよ?何しても許されるっていう免罪符じゃねえからな。自己責任って言葉、よく頭に叩き込んでおけ」
急に真面目な教訓を授けられて、面食らった俺は、鼻を摘まれたまま、無言でコクコクと頷く。
「よし。んじゃ、帰って、とっとと寝ろ。明日遅刻すんなよ」
そう言って、月山薫は指を離した。
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