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さっきまでの甘い雰囲気は、何処へやら。
荷物を持って車を降りた俺に、「じゃあな」と、一声だけ掛けると、月山薫は、いつもの調子で車を走らせて行ってしまった。
そんな奴の車を、呆然と見送る。
……………え?
……何?
何だ、この理不尽なまでの敗北感は……。
…………やっぱり、俺って、そんな魅力ないんだろうな。
………いや、分かってたけどさ。
自分に、あの月山薫が手を出すくらいの魅力があるなんて思えないし、想像も出来ない。
けど!!
だからって、恋人の誕生日の夜の締め括りがアレか!?
遅刻すんなよって、どんだけガキ扱いなんだよ!
あんた、俺の母さんかよ!?
大体、あの間は、何だったんだよ。
あのキ…キスは、何だったんだよ、ちくしょー…。
二十歳になった夜に、恋人からガキ扱いって凹む……。
俺って、そんなにガキっぽい?
そんなに危なっかしい訳?
あーーー!!!もーーー!!!
誰も通らない夜の街で、一人頭を掻き毟る。
俺のときめきを返しやがれ!!くそピアニストー!!!!
二十歳になった誕生日は、こうして散々な夜で幕を閉じた。
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