冷徹貴公子は嫌な奴

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*冷徹貴公子は嫌な奴・3* 大学の帰り。 友人と別れた俺はCDショップに来ていた。 今日は、父さんの新作CDの発売日だ。 発売前から名盤と評判になっているそのCDは、予約が殺到したらしい。 けど、クラシックCDなんて、そんなに売れないだろうと思っていた俺は、予約なんてしていなかった。 いや、勿論、父さんに言えば貰えるのかもしれないけど、それは……なんか気恥ずかしい。 父さんと打ち解けて日が浅い俺は、気軽に頼み事とか、まだハードルが高すぎて出来ない。 発売当日に行けば大丈夫だろうと思っていた俺は、自分の甘さを思い知る事になった。 そう。 何処に行っても売り切れで、品切れの文字が表示されている。 三軒ほど回った俺は、結構穴場なショップに来てみた。 ここに無かったら、きっと、もう何処にも無い。 少し小さめな店の中に入ると、真っ直ぐにクラシックコーナーへと向かう。 ここでも、やっぱり目玉商品なようで、一番目立つ場所に特設コーナーが出来ていた。 父さんの姿が載った大きなPOPが飾られている。 「げっ…」 父さんのCDのPOPに向かい合うようにして、あの嫌な奴、ピアノの貴公子とやらのPOPも飾られていた。
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