3859人が本棚に入れています
本棚に追加
*冷徹貴公子は嫌な奴・3*
大学の帰り。
友人と別れた俺はCDショップに来ていた。
今日は、父さんの新作CDの発売日だ。
発売前から名盤と評判になっているそのCDは、予約が殺到したらしい。
けど、クラシックCDなんて、そんなに売れないだろうと思っていた俺は、予約なんてしていなかった。
いや、勿論、父さんに言えば貰えるのかもしれないけど、それは……なんか気恥ずかしい。
父さんと打ち解けて日が浅い俺は、気軽に頼み事とか、まだハードルが高すぎて出来ない。
発売当日に行けば大丈夫だろうと思っていた俺は、自分の甘さを思い知る事になった。
そう。
何処に行っても売り切れで、品切れの文字が表示されている。
三軒ほど回った俺は、結構穴場なショップに来てみた。
ここに無かったら、きっと、もう何処にも無い。
少し小さめな店の中に入ると、真っ直ぐにクラシックコーナーへと向かう。
ここでも、やっぱり目玉商品なようで、一番目立つ場所に特設コーナーが出来ていた。
父さんの姿が載った大きなPOPが飾られている。
「げっ…」
父さんのCDのPOPに向かい合うようにして、あの嫌な奴、ピアノの貴公子とやらのPOPも飾られていた。
最初のコメントを投稿しよう!