冷徹貴公子は嫌な奴

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「げ…」 「……」 バッタリ。 そう、まさに今の状況を表すとしたら、それしかない。 さっきまで見ていた顔が、リアルに目の前にある。 POPの写真と違って、かなり不機嫌そうだけど。 冷たい眼差しで俺を睨んでいた相手の視線が、俺の手元へと移っていく。 「……」 そのまま数秒が過ぎ、何ともいえない空気が流れた。 ……ていうか、別に相手する必要ないよな。 出来れば、なるべく関わりたくない。 無視して、歩き出そうとした時だった。 「それ」 「え?」 不意に話し掛けられて、無視するつもりが、その場に留まり顔を上げてしまった。 「買うのか?」 成瀬が、何を指しているのかが分かるまで、数秒掛かった。 ジッと、成瀬の視線が注がれているのは、俺の手の中にある、父さんのCDだ。 「買い…ますけど…?」 思わずタメ口になりそうになるのを、ぎこちなくも修正する。 すると、そんな事はバレバレなのか、それとも答えが気に入らなかったのか、成瀬……さんの眉間にシワが出来た。 「渡せ」 ………………。 「……は?」 言われた瞬間、どういう意味なのか理解が出来なかった。
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