冷徹貴公子は嫌な奴

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理解出来たのは、差し出された手を見てからだった。 渡せ? CDを? 何で? 「嫌です」 理解は出来ても、意味が分からないまま答えると、相手の眉間のシワが深くなった。 「犬の君が聴いたところで、半分も理解出来ないだろう。そんな事はクラシックに対する冒涜だ」 …………はぁ? なに言ってくれちゃってんの、この人。 意味不明なんですけど? 俺みたいなど素人には、クラシック音楽を聴く権利なんて無いと? つまり、そういう事か? 「バッカじゃね?意味わかんねーし」 思わず本心が口を突いて出ると、いよいよ成瀬…さんの目が険しくなる。 顔が整ってるから、迫力倍増だ。 「だって、そうでしょ?素人はクラシック聴くなって?つまり、そういう事ですよね?でも、買って行く大半の人間は、素人ばかりだと思いますけど?違いますか?」 「君は、馬鹿か?正確には、『君という、素人の人間には』だ。つまり、君、限定だ。人の話は、ちゃんと聞け」 馬鹿は、あんただ!あんた!! なんで、それが俺がCD買うなって事になるんだよ! そんな理屈、全然分かんねーし、理解不能なんですけど!
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