冷徹貴公子は嫌な奴

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「嫌です。俺が何を買おうが、聴こうが、俺の勝手なんで。貴方に関係ないでしょ、それこそ」 これ以上は、時間の無駄だ。 そう見切りをつけて、成瀬さんを避けて通り過ぎようとした。 すると、立ち塞がるように成瀬さんが移動して来る。 「……」 「……」 暫く無言で睨み合い、反対側を通り抜けようとしたら、同じように成瀬さんが動いて、行く手を塞いで来た。 「……」 「……」 ……………にゃろう。 そっちが、その気なら…。 スーッと深く息を吸い込むと、そんな俺を、成瀬さんは、何事かと不思議そうに見つめる。 「あー、ピアノの貴公子、成瀬蒼さんだー。俺、ファンなんですよねー。サインして下さい。え?握手もいいんですかー?え?記念撮影までー?わー、嬉しーなー」 「なっ!」 ちょっと棒読みだったけど…大きな声を出した俺に、成瀬さんは慌てた様子で目を見開いた。 小さなショップとはいえ、そこそこに人が入っている。 皆、何事かと視線が集まってきた。 「あの!私、ファンなんです!」 一人の女の人が寄って来ると、後はもう雪崩が起きたように人が集まって来た。 そんな人達を避けて、ゆっくりとした足取りで会計場所へと向かう。
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